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移転価格算定方法のわかりやすい選び方 | 押方移転価格会計事務所

移転価格税制 文書化 事実 機能 リスク

※この記事を読む前に「機能リスク分析の書き方しだいで移転価格文書は決まる」をご確認下さい。

最も適切な方法を選ぶ(ベストメソッド方式)

機能リスク分析の結果を踏まえて、下記の独立企業間価格算定方法の中から1つを選ぶことになります。

<独立企業間価格算定方法>

<基本三法>
・独立価格比準法(CUP法)
・再販売価格基準法(RP法)
・原価基準法(CP法)
<基本三法以外>
・取引単位営業利益法(TNMM)
・利益分割法(PS法) (残余利益分割法、比較利益分割法、寄与度利益分割法)

※各計算方法の内容は移転価格専門用語集をご確認下さい。

以前は基本三法に優先順位が与えられていましたが、現在は全ての算定方法の中から最も適切な方法を選ぶことになっています。(ベストメソッドルール)。

そのためローカルファイルには、「全ての計算方法を検討した結果、この方法が最適と判断した。」と記載することになります。

ですが、最適な方法を選びなさいと言われても、初めて文書化に取り組む場合はどのように選定すればいいのかわからないと思います。

そこで、今回は(かなり割り切った形で)移転価格算定方法を選び方を説明します。

移転価格算定方法の選定手順

Step1:取引単位営業利益法(TNMM)の適用可能性を検討

中堅企業の場合、親会社が中核企業として圧倒的に重要な役割を果たしている反面、海外子会社の規模はそれほど大きくなく比較的単純な機能を果たしていることが多いです。

このことを移転価格税制に則した表現に置き換えると、「超過収益を生む技術や販売ノウハウといった重要な無形資産は親会社が全て保有し、海外子会社は重要な無形資産を保有していない」となります。

TNMMはこのような場合に採用される可能性が高い方法です。

「取引単位営業利益法を機能が単純な方に適用する理由」にも書きましたが、TNMMは親会社と子会社のうち機能リスクが限定な側の営業利益の水準を検証します。

子会社の方が機能リスクが単純で無形資産も保有していないのであれば、子会社の営業利益率を比較対象企業と比較し、概ね同水準であれば、移転価格上の問題はないと説明することができます。

Step2:海外子会社の利益率が高い場合は残余利益分割法を検討

海外子会社の利益率が高い場合、TNMMの適用ができない場合が考えられます。

不当な利益移転がないにもかかわらず海外子会社の利益率が平均水準よりも高いということは、海外子会社に無形資産があるということになります。(無形資産についてはこちらから

親会社と海外子会社の両方に無形資産がある場合は、残余利益分割法の適用が検討されます。

これは親会社と子会社の利益から、まず基本的な活動の結果による一般的な利益を控除し、残った利益の合計額を超過収益力(=無形資産)形成に貢献した要因(分割ファクター)の比率で分配する方法です。

一般的な利益は企業データベースから類似企業の利益率を抽出して算出します。無形資産の形成要因(分割ファクター)としては、研究開発費用や販売ノウハウの構築費用を用います。

TNMMより計算が複雑ですし分割ファクターの妥当性を巡って税務当局と見解が分かれる可能性もありますが、海外子会社の利益率が高水準である場合には必要な作業になります。

Step3:比較対象取引がない場合は寄与度利益分割法

比較対象取引を見つけられない場合は、企業の内部データのみで計算を行う寄与度利益分割法しか選択肢がありません。

この方法は寡占市場で比較対象企業がほとんどない場合や、金融機関のグローバルトレーディングサービスなど親子の果たす機能が高度に統合している場合に採用されるべき方法です。

分割ファクターの妥当性を巡って議論になる可能性もありますし、分割ファクターの比率が少し変わるだけで大きな金額が動きますので、最後の手段と考えておくべきかもしれません。(寄与度利益分割法が適切な場合はこちらから

基本三法を採用しない理由は「比較可能性が不十分」

独立価格比準法などの基本三法は、取引単位営業利益法よりも比較対象取引に求められる要件が厳格であるため、「そのような取引を見つけることはできなかった」という理由で不採用とすることが多いです。

基本三法が採用できない場合は、取引単位営業利益法か利益分割法しか選択肢がありませんので、上記のような流れになるということです。

多少乱暴な説明ではありますが、初めて文書化に取り組む方の参考になればと思います。

次の記事に続く→「切り出し損益は取引単位で作成することが原則」

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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