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比較対象企業(ベンチマーク)の選定と結論(経済分析) | 押方移転価格会計事務所
- 2018.08.05
- 移転価格文書化
※この記事を読む前に「切り出し損益は取引単位で作成することが原則」をご確認下さい。
経済分析(ベンチマーク分析)はローカルファイルの最終項目
このパートにおいて、親子間取引を行った結果の利益水準が比較対象となる類似企業と大きな差がないかどうかを検証し、移転価格上の問題があるかどうかの結論を出します。(※海外子会社サイドを検証対象とする取引単位営業利益法の適用を前提とします。)
検証対象となる利益率は海外子会社の切り出し損益(または子会社全体の損益計算書)の営業利益率ですので、ここでは比較対象企業の選定について説明します。
企業データベースに絞り込みをかける
比較対象企業は企業データベースから比較可能性を高めるための絞り込み(スクリーニング)を行うことによって、選出します。
選出された比較対象企業の営業利益率レンジと海外子会社の営業利益率を比較し、レンジ内に収まっていれば移転価格上の問題はないという結論になります。
定量基準と定性基準で絞り込み
スクリーニングの手順ですが、大元のデータベースとしてはビューロー・ヴァン・ダイク社の企業データベースを使うことが一般的です。
世界50か国以上の税務当局自身も使っている世界最大のデータベースです。国や業種を絞ったパッケージ商品も発売されていますので、自社にとって適切なものを利用するといいでしょう。
データベースからのスクリーニング手順は厳密には決まっていませんが、例えば次のような基準で比較可能性が十分ある(と判断する)企業を選んでいきます。
【定量基準】
- 海外子会社所在国の企業を選定する
- 海外子会社と産業分類コード(US SICコード)が類似する企業を選定する
- 別の企業に株式の50%以上を保有されている企業は除く
- 3年連続赤字企業は除く
- 売上高が10倍以上または10分の1以下の企業は除く
- 未上場企業は除く
【定性基準】
- 製造している製品の類似性が低い企業を除く
- 果たしている機能に重要な差異がある企業を除く
上記に限らず比較可能性を高めるためであれば、その他の基準を使うことも可能です。
移転価格分析を行うためのその他の情報
比較対象企業の選定が終われば、利益率レンジを具体的に決定し、移転価格検証を行うために下記についても記載します。
利益水準指標(PLI Profit Level Indicator)
移転価格分析に使用する比率(利益水準指標)についても記載します。
取引単位営業利益法(TNMM)の場合は、
・売上高営業利益率
・総費用営業利益率
・ベリーレシオ(売上総利益÷販管費)
の3つから選ぶことになります。
複数年のデータの使用
比較対象企業を選定したとしても利益率は毎年変わります。より客観的なデータを使用するために3年間や5年間の平均利益率を使用する方が望ましいでしょう。その場合はその旨を記載して下さい。
あくまでも比較対象企業の平均を使うのであって、子会社の利益率は原則として単年度のデータを使用します。
利益率レンジ
複数の比較対象企業の利益率を用いて独立企業間価格レンジを決定することになりますが、レンジには2つの考え方があります。フルレンジと四分位レンジです。
フルレンジとは比較対象企業の利益率の最大値と最小値からなる幅のことで、四分位レンジとは上位25%と下位25%を切り捨てた真ん中の50%幅のことです。
実務的には四分位レンジが使われることが多いです。その場合は「四分位レンジを使用する」と記載しましょう。
結論
算出した独立企業間価格幅(レンジ)の中に、海外子会社の利益率が収まっていれば親子間取引は独立企業間価格で行われたという結論になります。
レンジ内に収まっていない場合は移転価格税制上の問題があるということですので、取引価格の見直し等の対策が必要です。
取引価格を変更するとなると関連各部門を巻き込んだ大掛かりなイベントとなります。時間も労力もかかりますので、早めに(=税務調査が来る前に)移転価格分析を行っておくことをお勧めします。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
「移転価格対応に失敗したくない人が最初に読む本」
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