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シンガポールの移転価格リスクを調査 | 押方移転価格会計事務所

移転価格税制 シンガポール

 

【2016年6月30日 追記】

低税率国で知られるシンガポール

東南アジアの新興国シンガポールは、金融機関や大企業が地域統括本部を置くなど国際ビジネスのハブ的な位置づけとなっています。

法人税率が17%と低いので、子会社をシンガポールに設立する企業も多いです。安全な国ですのでシンガポールで働きたいという日本人も多いと思います。

ですが、最近は就労ビザの取得要件が厳しくなり、月間4000ドル程度の給与がないとビザが取れないようです。シンガポールに赴任するためには、マネージャーなどの管理職級でないと難しいかもしれません。

日本の税制にタックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)というものがあります。これは法人税率の低い国にペーパーカンパニーを作り、取引にその会社を関与させることにより、日本で納めるべき法人税を不当に免れることを規制するルールです。

タックスヘイブン税制には「トリガー税率」というものがあります。外国子会社の税負担率が、トリガー税率未満の場合、その外国子会社がペーパーカンパニーでないことを確定申告において説明する必要があります。

現在のトリガー税率は「20%未満」ですので、シンガポールに海外子会社を作る場合は、タックスヘイブン税制についても注意が必要ということですね。

シンガポールの移転価格税制

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シンガポールに海外子会社を作った場合はタックスヘイブン税制だけでなく、移転価格税制や海外子会社への寄付金リスクについても注意が必要です。

特に出向者関連費用には注意が必要です。シンガポールはコストの高い国ですので、親会社が給与や手当の相当部分を負担している場合、「それはシンガポール子会社への支援ですよね」と寄付金認定される可能性があります。

しっかりと「給与格差補てん」であることを説明できるようにエビデンス類の整備が必要です。

シンガポールも2006年にOECDガイドラインに準拠した移転価格ガイドラインを導入し、その後も順次、法整備が進んでいます。

2015年には移転価格ガイドラインの改訂が行われ、同時文書化(法人税申告書と同時に移転価格文書を作成すること)の規定が盛り込まれました。(親子間取引額が1500万ドル(約12億円)以下の場合等は、作成コストへの配慮から「同時文書化」の義務は免除となりますが、移転価格文書がない場合に推定課税を受ける可能性は残ります。)

低税率を武器に海外企業の誘致をしてきたシンガポールが移転価格税制に対する規制強化を行うのは、税逃れに対する国際的な批判を回避するためだと思います。

親子間取引を通じて低税率国であるシンガポールに利益を不当にプールすることを抑制するために、同時文書化義務を課すことにより、親子間取引の取引価格の妥当性を説明させようとしているのです。

シンガポールの税務リスクについて調査してきます

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今月(2016年6月)下旬に、インドネシア→シンガポール→ベトナムと出張に行ってきます。 シンガポールでは、移転価格リスクや海外寄付金リスクについて、中堅企業がどのようなスタンスで対策を打っていくべきかを現地のコンサルタントからヒアリングしてきます。

帰国後、この記事にヒアリングしてきた内容を追記しますので、シンガポールに関心のある方はぜひご確認下さい。

【2016年6月30日 追記】

シンガポールは他の東南アジア諸国とは違い、投資で多くの収入を得ている国です。使いやすい金融制度、低い税率などを武器に外資の誘致に成功し発展してきたシンガポールは、国際的な協調を重視します。

移転価格税制についても、BEPSプロジェクトに準拠した税制改正が行われ、一定額以上の関連者取引を行う企業に対して同時文書化が義務付けられましたが、これも税収確保というよりは国際的な協調を重視した改正と考える方が妥当なようです。

税務調査自体もあまり行われないようですので、他のアジア諸国と比較すると移転価格リスクは低いといえるのではないでしょうか。

しかしながら日本の税務調査においては、シンガポールが低税率国であることからタックスヘイブン税制と移転価格税制の両面から検討が行われることは間違いありません。

シンガポールに現地法人を持つ企業は、日本側の税務リスクをより強く認識しておくことが重要だと思います。【追徴部分終了】

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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