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無形資産とは | 押方移転価格会計事務所
移転価格税制における無形資産とは、法人が有する資産のうち、有形資産及び金融資産(現金、預貯金、有価証券等)以外の資産で、独立の事業者間で通常の取引の条件に従って譲渡・貸付等が行われたとした場合に対価の支払が行われるべきものと定義されています。
また租税特別措置法関係通達66条の4(3)-3(注1)によると、無形資産とは「特許権などの工業所有権、著作権、営業権などの無形固定資産(減価償却資産)、顧客リスト、販売網などの重要な価値のあるもの」とされており、同66条の4(8)-2において次が例示されています。
(1) 令第183条第3項第1号イからハまでに掲げるもの(※工業所有権、著作権、無形固定資産)
(2) 顧客リスト及び販売網
(3) ノウハウ及び営業上の秘密
(4) 商号及びブランド
(5) 無形資産の使用許諾又は使用許諾に相当する取引により設定される権利
(6) 契約上の権利((1)から(5)までに掲げるものを除く。)
目には見えないが価値があるものなので、無形資産を国外関連者や第三者に譲渡したり貸し付けたりする際には対価が発生するということです。
関連語句:特定無形資産とは
無形資産は比較可能性を判定する際の重要ファクター
無形資産はローカルファイルの作成過程等において比較対象取引を選定する際にも重要なファクターとなります。
比較対象取引を選定するにあたっては、売手及び買手が果たしている機能・リスクの類似性を検討します。国外関連者が無形資産を有していない場合、無形資産を有している企業は比較対象として適切ではないということになります。
企業が利益を出している要因は様々な説明ができると思いますが、移転価格税制における無形資産とは「重要な価値のあるもの」と表現されているように、基本的活動のみを行っている企業より高い利益を上げている根拠となる収益源泉のことを意味します。
無形資産と類似するものとして「独自の機能」という用語もありますが、重要な無形資産より広い概念であるという考えが示されているのみで、はっきりとした定義付けは行われていません。
無形資産の使用料(ロイヤリティ料率)の算定方法
無形資産の有無は比較対象企業の選定に影響を与えるだけでなく、親子会社間で無形資産の使用料(ロイヤリティ)を適切に収受しているかどうかという別の問題にもつながります。
親会社が保有している無形資産を使用することにより海外子会社が高い利益を上げている場合、その無形資産の使用料を適切に受け取っているかどうかが問題になるということです。
無形資産取引も独立企業間価格で行う必要がありますが、その算定方法としては、
①マーケットアプローチ
②インカムアプローチ
③コストアプローチ
の3つの考え方があります。
①マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、同様の無形資産が第三者間取引において、どの水準のロイヤリティ料率で取引されているかを確認する方法です。(独立価格比準法と同等の方法 または独立取引比準法(CUT法)
しかしながら、そもそも無形資産はユニークであるがゆえに価値があるものですので、比較可能性の高い取引を探すことは非常に困難です。
②インカムアプローチ
インカムアプローチとは無形資産を使用して得た利益から、無形資産を使用しなかった場合に得られたであろう利益(=基本的活動だけを行った場合の利益)を差し引き、残った利益(超過利益)をロイヤリティと考える方法です。
基本的活動だけを行った利益は、基本的活動のみを行っている企業の利益率を使用することにより算出が可能です。
超過利益が親会社のみの貢献で獲得された場合(=親会社のみが無形資産を保有している場合)は親会社に全額帰属すべきであり、双方の貢献によって獲得された場合(=双方が無形資産を保有している場合)は貢献度に応じて配分すべきと考えます。前者が取引単位営業利益法(TNMM)と同等の方法、後者が残余利益分割法(RPSM)と同等の方法です。
③コストアプローチ
コストアプローチとは、研究開発費用等の無形資産構築にかかったコストをロイヤリティで回収するという考え方です。
研究開発等はコストの回収を最終目的にしている訳ではありませんので、当アプローチ単独でロイヤリティ料率を決定するのではなく、上記のアプローチで算出された料率では十分なコスト回収ができない場合に補正する意味合いで適用すべき方法といえます。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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