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給与は現地法人負担、賞与は親会社負担は認められるか | 押方移転価格会計事務所
- 2020.05.28
- 海外寄附金
海外子会社への出向者の人件費について、給与は現地法人が負担し、賞与は親会社が負担している企業があります。
海外には日本のように年に2回、合計で給与の4ヶ月分程度の賞与ではなく、年に1回、1ヶ月分だけという習慣の国があります。また賞与の支給額が業績に大きく連動する企業もあります。
そのため、このような支給形態になったのだと思いますが、親会社が出向者の賞与を負担することは認められるのでしょうか。
寄付金認定の可能性あり
結論として、子会社への寄付金と認定される可能性はあるといえます。「海外子会社への出向者の人件費は原則として子会社負担」にも書きましたが、出向者の人件費は子会社負担が原則です。
例外として、出向先と出向元の給与条件の較差分を出向元が負担した場合は出向元の損金になります。
そして、「出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額」は給与較差補てん金として取り扱われます。(法人税法基本通達9-2-47)
しかし今回のケースは、海外子会社の業績に関係なく「給与は子会社負担、賞与は親会社負担」と企業が勝手に決めただけです。給与条件の較差補てんといえるかどうかはわかりません。
税務調査時にあれこれ説明して、給与較差補てん金と認められれば損金になりますし、認められなければ子会社支援(=寄付金)です。
せっかく給与の較差補てん分は損金に算入するという規定があるのですから、まずは給与較差額を調べる必要があります。出向者と同等の職務をしている現地の給与水準と、親会社の規定による給与との差額が給与較差額です。
そして親会社が負担しているのは給与較差分にとどまっていると説明できなければなりません。海外赴任規定などの関連エビデンスの整備・改定が必要になることもあるでしょう。
前回の調査で指摘されなかったとしても安心はできない
「給与は子会社負担、賞与は親会社負担」としていても、税務調査時に指摘されない可能性はあります。
給与較差補てん金と認められたのなら問題ありませんが、
・海外子会社が設立して間もない頃だったので、海外取引について突っ込んだ調査が行われなかった
・調査官が海外取引について十分な知識を持っていなかった
だけという可能性も考えられます。
海外に進出して間もない頃は取引額も小さく、出向者の人数も少ないことが通常です。ですがその後の数年間で海外ビジネスが本格稼働し、海外子会社の数や出向者の人数が増えた企業は多いと思います。
また海外進出企業の数が増え続ける中、調査官も海外取引に関する知識を増やしています。前回指摘されなかったからといって、次回も大丈夫とは限りません。
出向者への人件費負担が海外子会社への寄付金として指摘された場合、多額の出費を覚悟しなければなりません。独自ルールで出向者の人件費負担額を決めている場合は、精査することをお勧めします。
最後に「ミニワーク」をご提案します。ぜひ社内の皆さんと一緒に考えてみて下さい。
❝ミニワーク❞
「海外出向者に対する人件費負担額を独自のルールで決めていないでしょうか?「給与較差補てん金」と説明するためには、どのような業務フローの修正、エビデンスの整備が必要でしょうか。」
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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