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赤字の海外子会社の移転価格リスクは高い | 押方移転価格会計事務所

赤字 移転価格

移転価格税制は国と国の税金の取り合いですので、利益がどちらかに偏っている場合は移転価格リスクが高くなります。特に海外子会社が赤字の場合は、現地の当局から指摘を受ける可能性が高くなります。

「なぜ赤字なのですか?親子間の取引価格をどのように決めているのか調べたいので、ローカルファイルを提出して下さい」と言われた時、速やかに提出できないと「では我々の方で独立企業間価格を算出します」となってしまいます。

その結果例えば、子会社の比較対象企業の平均営業利益率である5%が適正水準であるとして追徴課税を受けることになります。(ちなみにローカルファイルを提出しても認められずに追徴される可能性が高いです。)

「赤字だから税金は払わなくていい」というのが世の中の常識ですが、移転価格税制に限っては「赤字だからこそ多額の追徴課税を払うことになる」ということです。

海外子会社に一定の利益をつけざるを得ない場合も

このようなリスクを避けるために、海外子会社に事実上の利益保証を行わざるを得ない場合もあります。

新興国を始めとする海外子会社側も、十数年前であれば日系企業が自国に工場を作り、雇用を創出してもらえれば十分だったかもしれません。外国企業誘致のための様々な税制優遇もあったと思います。

しかし経済が発展してくるにつれて、雇用を生むだけでなく、法人税もしっかり払ってもらわないと困るというスタンスに変わってきています。

そのような新興国にとって移転価格税制は、赤字企業から多額の追徴課税を取ることができる強力なツールとなり得ます

「利益移転など起きておらず、真剣にビジネスをおこなった結果の赤字だ」といいたくなる気持ちもわかりますが、移転価格税制もまだまだ完成されたルールではないのです。

利益水準と利益配分に目配りを

ここまでの話とは反対に海外子会社の利益水準が高い場合は、日本の税務当局から子会社への利益移転を疑われることになります。

ましてその子会社が、香港やシンガポール等の低税率国にある場合は、タックスヘイブン対策税制に抵触することにも注意しなければなりません。

結局、誰かがグループ各社の利益水準や親子間取引の利益配分について目配りをする必要があるということです。完全にグループ経営の時代です。

予算や経営計画を立てる時も、営業面だけでなく、国際的な二重課税リスク(追徴リスク)を小さくするという観点から、各社の利益水準や利益配分をチェックしてみて下さい。

関連記事:「日本サイドの利益率は無視していいのか」

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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