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移転価格文書化制度の現状 | 押方移転価格会計事務所
- 2017.05.26
- 移転価格文書化
2015年にOECDにおいて、多国籍企業が各国の税制の穴をついて租税回避を行うことを防止するための検討会(BEPSプロジェクト)が行われ、連結総収入7.5億ユーロ以上の企業グループは、①国別報告書(CbCR)②マスターファイル③ローカルファイルの3種類の文書を整備することが提言されました。
日本の税制改正
OECDの提言を受け日本でも2016年に税制改正が行われ、7.5億ユーロを概ね円換算した1000億円以上の企業は、国別報告書とマスターファイル(事業概況報告事項)の作成が義務化されました。
これらはいずれも決算終了日の翌日から1年以内にe-taxで提出することとされており、提出しなかった場合は30万円以下の罰金が課されます。最初の提出期限は2018年3月31日ですので、該当する企業は準備を進めているところです。
国別報告書は所定のフォーマットを埋める形で、各国の売上や所得額、納税額を記載します。世界各国の大企業が提出した国別報告書は税務当局間で自動共有されますので、今後、税務当局は世界中の大企業の納税額等を把握することになります。これは新時代の到来といえるでしょう。
ローカルファイルについて同時文書化義務が適用開始
一方、ローカルファイルは連結総収入が1000億円未満の企業であっても作成する義務があります。
ローカルファイルは特定の海外子会社との取引に移転価格上の問題がなかったかどうかを検証した文書です。連結総収入が1000億円未満だからといって自由に海外子会社に所得移転ができる訳ではありませんので、ローカルファイルは企業規模に関わらず作成が必要ということです。
そのことを踏まえた上で、ローカルファイルの作成と提出のタイミングについて新しいルールが適用開始になりましたので、ご説明をしておきます。
特定の海外子会社との取引が一定額(棚卸資産取引50億円以上または無形資産取引3億円以上)の場合、確定申告期限までにローカルファイルを作成することが義務化されました。そして税務調査時に調査官から求められた場合は、45日以内の指定された日までに提出する必要があります。
金額基準に達していない場合は確定申告期限までに作成する必要はありませんが、調査官から求められた場合は60日以内に提出しなければなりません。つまり「50億円」は確定申告期限までに作成するかどうかの基準であり、ローカルファイルを作るかどうかの基準ではないということです。
このルールをみても明らかなとおり、ローカルファイルは毎年更新が必要な文書です。1度作って終わりではありませんので、継続的に対応していくための社内体制を作ることが重要です。形式的にローカルファイルを作ればいいという発想ではなく、移転価格税制の考え方を理解し、会社方針として移転価格税制にどう対応していくのかを決定する必要があります。
下記記事では移転価格の同時文書化義務について詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
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<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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