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移転価格対応の重要性は会社規模とは必ずしも一致しない | 押方移転価格会計事務所
一般的に会社の規模が大きくなると、経理部が経理課と財務課に分かれるなど組織の細分化と人材の充実が起こります。
さらに上場すると会計監査対応など財務報告体制の強化が必要になりますので、経理部門の人数は未上場企業より明らかに増えます。
必然的に「会社の規模に応じた組織」「上場企業らしい経理部門」が作られていくものです。
会社全体の売上高ではなくグループ間取引の規模が重要
ところが国際税務や移転価格税制への対応は、会社自体の売上規模や上場未上場の違いではなく国外関連取引の大小が重要です。
私がこれまで関与した企業の中に社員7~8人の小さなソフトウェア会社であるにも関わらず、ヨーロッパの親会社に送金するロイヤリティが年間3億円を超えているため同時文書化基準を超えてしまっている例がありました。
経理部はもちろんなく、帳簿は顧問税理士に作ってもらっていて、管理は社長が直接面倒をみているような規模の会社です。
当事務所は「移転価格対応の内製化支援」がテーマですので、ローカルファイルを作成し、次年度以降は社長ご自身で更新して親会社(及び税務署)に報告できる状態になりましたが、社員数名の零細企業が同時文書化義務を満たすとはアンバランスな感じがしないでしょうか。
また別のケースでは連結売上高は20億円未満ですが、日本本社で製品を作らず海外子会社に作らせて全量買い上げているため、国外関連取引の額が10億円を超えていることがありました。
10億円となると結構な金額ですので、移転価格分析をしっかり行った上でローカルファイルを整備しておくべきといえます。
連結売上が大きくても、国外関連取引が少ししかない企業もある
反対に連結売上高が1000億円を超える規模であっても国外関連取引がほんの少ししかないケースもあります。
国内に多くの店舗を構える小売業で売上のほぼ全額が国内取引であるものの、中国子会社が1社だけ存在し、商品を少しだけ仕入れているため特定多国籍企業グループに該当し、国別報告書とマスターファイルの提出が必要になるというパターンです。
このようなケースでは会社の規模は大企業並みでも、社内的に国際取引の重要性が低いので十分な予算を取ることはできないかもしれません。
したがってコストをかけずに文書化義務を果たすことが重要な課題となるでしょう。
この場合も「移転価格対応の内製化」が問題解決のキーワードになります。
グループ間取引の規模に見合った移転価格対応を
このように移転価格税制への対応は国外関連取引の額の大小が重要であって、会社規模とは必ずしも連動しません。
「自社が大企業か中小企業か」ではなく「国外関連取引に重要性があるかどうか」で、移転価格対応にかける労力や予算を決めるようにしましょう。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
「移転価格対応に失敗したくない人が最初に読む本」
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