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立て替えとコストカバーは全く別の取引 | 押方移転価格会計事務所
- 2022.06.07
- 国際税務
「海外子会社のために日本本社で立て替えたモノやサービスについて、海外子会社への請求時には消費税分も含めるべきでしょうか。」という質問を何度か受けたことがあります。
これはおそらく「代行払い」という意味の立て替えと利益ゼロの原価基準法(コストカバー)を混同していると思います。
例えばタイ子会社のスタッフが日本でしか買えない「穴の開かないホッチキス」を欲しがったとします。そこで日本本社の社員がタイ出張の際に文房具屋でホッチキスを買って持っていったとします。
価格が税込1100円だとすると会計処理は、立て替えた時に
(立替金)1100(現金預金)1100
としておき、精算時に
(現金預金)1100/(立替金)1100
として終わりです。
1000円しか請求せずに100円の雑損失を計上したのであれば、その分はタイ子会社への寄附です。
あるいは購入時に仮払消費税を100円たてるのも誤りです。単なる代行支払いであって、日本本社が自社のPLに反映させるべき課税仕入れを行ったのではないからです。
「立替金」という仮勘定が一時的にたっただけで、精算した後はPLやBSに何の影響も与えません。移転価格税制の対象取引でもない、ただの「代行払い」です。
この場合は結局、タイ子会社は日本の消費税込みの金額をもって費用計上することになります。
コストカバーは移転価格税制の適用対象取引
一方、海外子会社にサンプルの販売や加工などの役務提供を利益ゼロで行う取引はまったく別ものです。
海外子会社のために日本国内でシステムか何かの設定作業を行い、それを外部者に委託したとします。
外部業者への支払い時の処理は下記です。
(業務委託費)50000/(現金預金)55000
(仮払消費税) 5000←課税仕入れ
そして海外子会社から対価を受け取った時は次です。
(現金預金)50000/(役務収益)50000
/(仮受消費税) 0←輸出免税
サービスによる便益が海外で享受されるものであれば、非居住者(外国法人)への役務提供ですので輸出免税です。
便宜的に「立て替え払い」という表現を使ったとしても実態は、海外子会社にサービスを提供する際に外部者への支払いが発生し、その費用の額(総コスト)をもって海外子会社との役務提供取引における対価の額としたのであって、本来子会社が日本に来て支払うべき費用を子会社の代わりに払った(立て替えた )のではないということです。
つまり親子間の役務提供取引における独立企業間価格算定方法として原価基準法(コストカバー方式)を採用したということです。
そしてコストカバー方式で移転価格税制上の問題があるかどうかはまた別の判断です。(「グループ内役務提供(IGS)では総原価を請求することが多い」参照)
海外子会社に販売(貿易や役務提供)したのか、単なるお使いだったのかの違いといってもいいでしょう。
こういうことは時々あると思いますので、その都度考えましょう。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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