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複数年度検証はあくまでも例外 | 押方移転価格会計事務所

移転価格検証は海外子会社(または日本本社)の単年度の数値と、比較対象企業の営業利益率等とを比較する単年度検証が原則です。

比較対象企業の利益率は数値の信ぴょう性を高めるために3年間や5年間の平均値を使うことが一般的ですが、それと比較する海外子会社の利益率はあくまでも単年度の数値を使います。

海外子会社の複数年間の平均利益率が独立企業間価格(ALP)レンジ内に収まっていればOKということであれば、利益率が高かった年と低かった年との相殺ができることになります。

移転価格税制は海外に所得移転があった年にだけ適用される法人税法の特別法であり、法人税法は各年度ごとに課税所得を確定しますので、相殺など認められるはずはありません。

複数年度検証が認められる条件

しかし海外子会社の複数年間の数値の平均値を比較対象企業と比べる複数年度検証は例外的に認められています。

海外子会社の2022年から2024年の平均営業利益率を、比較対象企業の2021年から2023年の平均営業利益率と比較するという意味です。

移転価格事務運営要領3-2(2)に次の記載があります。

「国外関連取引に係る棚卸資産等が一般的に需要の変化、製品のライフサイクル等により価格が相当程度変動することにより、各事業年度又は連結事業年度の情報のみで検討することが適切でないと認められる場合には、当該事業年度又は連結事業年度の前後の合理的な期間における当該国外関連取引又は比較対象取引の候補と考えられる取引の対価の額又は利益率等の平均値等を基礎として検討する」

需要の変動が相当大きくて単年度検証が適切でない場合に限って複数年度検証が許容され得るということです。

レンジ内に収めるための抗弁として使っていないか

あくまで例外的に認められ得るということですので、単に社内の調整不足でALPレンジ内に収まらなかっただけなのに「需要の変化が大きいので複数年度検証を行う」とローカルファイルに記載しても認められない可能性があります。

単年度検証を原則とするのは海外の税務当局も同じですが、海外子会社の営業利益率がALPレンジを下回る年があったため、「3年平均でALPレンジ内に収まっているので問題ない」と主張したところ、「単年度検証が原則であり、レンジを下回った年度については追徴する」と指摘された事例も聞いています。

やはり親子間の取引価格をきちんとウォッチして、単年利益率をレンジ内に収めるように運用していくべきでしょう。

どうしても複数年度検証を行う場合

単年度検証が原則ですが、工作機器など需要変動が大きい業界では複数年度検証にせざるを得ないこともあるでしょう。

そういう時はまず、複数年度検証という移転価格ポリシーを採用することについて稟議書などのオフィシャル文書を残しましょう。

複数年度検証が認められるかどうかは実態判断です。

税務調査時に説得力のある説明ができるかどうかの勝負ですが、ALPレンジ内に収まらなかったから後付けで複数年度検証「ということにした」のか、公式の方針としてあらかじめ複数年度検証を採用していたのかの違いは大きいです。

そして「3年平均でALPレンジ内に収める」というポリシーにしたのであれば、複数年間をまたがった親子間の取引価格の調整を行いましょう。

実際の親子間の取引価格を調整する作業がなければ、移転価格税制に適切に対応できているとは言えません。

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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