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広告宣伝費が海外子会社への寄付とされる可能性 | 押方移転価格会計事務所
- 2021.01.18
- 海外寄附金
広告宣伝費を負担すべきは、親会社か子会社か
ブランド認知度向上や、特定の商品のプロモーションのために海外子会社が存在する国でテレビCM等の広告宣伝を行うことがあります。
この時の費用を親会社が負担すると、海外子会社が負担すべき広告宣伝費を寄付したとして追徴課税を受けるリスクがあります。
多額の追徴税を払うことになるかもしれませんので、事前に広告宣伝費の寄付金認定リスクを認識しておくことが重要です。
検討すべき項目
広告宣伝費の寄付金認定リスクについて検討すべき項目は、次のようなものです。
海外子会社の経営状態は良好か
海外子会社の経営が苦しい状態で、海外子会社が販売している商品のテレビCM等を行い、その費用を親会社が負担したとします。
この場合は、海外子会社の販促支援をしたという色合いが濃くなりますので、寄付金認定のリスクが高くなります。
企業イメージの宣伝か特定の商品の宣伝か
企業イメージをアップさせるための宣伝である場合は、親会社のブランド構築費用という論拠が通りやすくなりますが、子会社が販売している商品を直接宣伝している場合は、子会社が負担すべき費用と言われる可能性が高くなります。
親会社との直接契約か
親会社と現地の広告代理店等が直接契約を結んでいる場合は、そうでない場合よりも、親会社主体の経費と言いやすくなります。
別名目で対価の回収が行われていないか
海外子会社からブランドロイヤリティを受け取っている場合、海外子会社がある国で広告宣伝を行ったとしても、世界的なブランドイメージの維持・向上にかかる費用は親会社が負担し、子会社はブランド使用料を支払う形にしていると主張できます。
あるいは経営指導料等の別名目でフィーを受け取っていて、その中に広告宣伝費の子会社負担分が含まれると契約上明記されている場合も同様です。
いずれにせよ受け取っている金額が十分かどうかは確認されるはずです。広告宣伝費の総額に対する子会社の実質的負担割合などを事前に検証しておきましょう。
広告宣伝費を加味した製品価格になっていると主張できるか
親会社が広告宣伝費を全額負担することを前提とした上で、親子の機能とリスクを分析し、製造コストや販売コスト、見込販売数量等を考慮して子会社への販売価格が決定されていれば、課税を回避できる可能性があります。
これは広告宣伝費についての寄付金課税ではなく、移転価格課税(親子間の取引価格の問題)として取り扱うということです。
もっとわかりやすくと言うと、広告宣伝費の負担割合が変われば親子間の製品の取引価格も連動して変わる仕組みになっているという意味です。
この場合は製品価格の算出過程やローカルファイル、広告宣伝が親会社の一方的押しつけではなく両者の協議によって行われていることを示す文書、海外事業に係る中期計画など関連資料を整備しておく必要があります。
一部負担してもらう方が無難
親会社と子会社のどちらが負担すべきかは、最終的には事実認定になります。「こうすれば確実に親会社の損金として認められる」というテクニックは存在しません。
争いになった場合は、親会社が負担すべき費用であるという証拠を積み上げて主張することになりますが、子会社が1円も負担していない場合は、分が悪い勝負になるかもしれません。
海外子会社が存在する国で広告宣伝をする以上、海外子会社に便益が全くないと主張することは困難だと思います。
一部でも受け取っておくと「金額が多いか少ないか」という妥当性の議論に持ち込むことができますので、大きな金額が動く広告宣伝であれば、一部は子会社に負担してもらう方が無難でしょう。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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