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子会社への債権放棄を損金算入すると寄附金リスクがある | 押方移転価格会計事務所
- 2022.10.24
- 海外寄附金
会計上の処理は自己判断でOK
海外子会社に限ったことではありませんが、子会社の業績不振が深刻で財務内容が悪い場合、親会社において会計上の処理をすることがあります。
具体的には子会社株式の減損と子会社への債権に対する貸倒引当金の計上(または貸倒損失の計上)を行います。子会社株式の減損と債権に対する貸倒引当金の計上は、どちらも子会社の業績不振を起因としていますが、最終的な判断基準は異なります。
子会社株式の減損
⇒子会社の業績の回復可能性があるかどうかを検討し、回収可能性がないと判断すれば実質価値(簿価純資産)まで減損する
貸倒引当金の計上
⇒債権の回収可能性があるかどうかを検討し、回収可能性がないと見込まれる部分に対し貸倒引当金を計上する
監査法人の監査が入っている場合は強制的にこれらの処理を行わされますが、そうでなくても企業の自主判断で行って構いません。
税務上の損金にできるのは非常に限定的
ですが、これらの処理を税務上の損金にすることは非常に難しいです。身内企業に対するものですので、恣意性が入りやすいからです。
まず子会社株式の減損については子会社が存続している限り損金に算入することはかなり難しいです。(回復が見込めないことを客観的に証明する必要がある)
債権については正式に債権放棄を行った場合は、これも非常に限定的ですが損金に算入できることがあります。
再建支援をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが明らかな場合や、倒産を回避するためにやむを得ず行うもので合理的な再建計画に基づく場合など、その再建支援等を行うことに相当な理由があると認められる場合は、子会社に対する支援(≒債権放棄)の損金算入が認められるとされています。
これはどこまでいっても実質判断であり、準備不足な状態で安易に損金算入すると税務調査で子会社への寄附金と指摘される可能性が(かなり)高いです。
「子会社が経営危機にあり、債権放棄しなければさらに大きな損失が出る」ことをしっかりしたエビテンスを用意した上で、自信を持って説明できる状態でなければ損金処理はしない方が無難です。
当事務所でも海外子会社に対する債権放棄額を損金に算入し、その後の税務調査で何とか指摘を免れた例がありますが、その時は1年以上かけて再建計画などのエビデンスを整備しました。
損金に算入するのであれば十分過ぎるほどの準備が必要です。
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