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事業計画が税務処理上のエビデンスになることがある | 押方移転価格会計事務所

事業計画 移転価格

税務の世界は債務確定主義といって、将来の見積りなど不確実性が残る費用の損金計上は原則として認められません。

例えば会計上求められる各種引当金や減損会計の適用による損失は、税務では貸倒引当金の一部を除いて損金に算入できません。

しかし将来予測が税務判断に影響を与える場面、いわば債務確定主義の例外も少しだけ存在します。

債権放棄を行う際の再建計画

ひとつは債権放棄です。

子会社再建のための合理的な事業計画に基づくやむを得ない債権放棄は損金算入が認められる場合があります。

これは債権放棄額を損金に算入する際のエビデンスとして事業計画を使うということです。

現時点でデフォルトが確定した訳ではありませんので、債務確定主義の例外といえるでしょう。

移転価格ポリシー

そして言われてみればと思うことが移転価格ポリシーに基づく親子間の取引価格の設定です。

海外進出企業の多くは国外関連者の営業利益率を一定レンジに収めるように親子間の取引価格を設定しています。

これは国外関連者の予算や事業計画が売上や売上原価などの税務上の益金損金額に影響を与えているということです。レンジ内に収めるために期中価格改定を行う場合も、子会社の業績見通しを使うのですから同様です。

またグループ間で無形資産を売買する際などに用いるDCF法も債務確定主義の例外といえるでしょう。予測収益が税務上の売買価格を決定するからです。

事業計画のエビデンスとしての証拠力

事業計画や業績見通しが税務処理における一種のエビデンスになるということですが、当然、エビデンスとしての証拠力が不十分な場合は税務処理が認められない可能性もあります。

事業計画というエビデンスの証拠能力(客観的合理性)を確保するためには精度の高い予測を行うことはもちろん重要ですが、それ以上にその事業計画の承認プロセスが重要だと思います。

取締役会で承認された事業計画であれば、結果的に実際とのかい離が大きくなったとしても一定の証拠力はあると主張できるでしょう。

特に債権放棄のための事業計画には取締役会の承認は最低限必要だと思います。場合によっては外部者に作ってもらうのもありでしょう。

親子間の取引価格を例外的に改定する場合も役員会決議が欲しいです。稟議決裁レベルでは証拠力が足りないかもしれません。一方、毎年定期的に行う価格改定に使用する業績見通しは稟議決裁レベルでも大丈夫だと思います。

事業計画を税務処理のエビデンスとして使う場合は、否認リスクの程度に応じた証拠力を持たせるようにしましょう。

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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