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DCF法が適用されるシチュエーション(参考事例集) | 押方移転価格会計事務所
- 2020.08.27
- 移転価格全般
令和元年度の税制改正でディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)が、独立企業間価格算定方法のひとつとして認められました。
この方法は、どのようなシチュエーションでの適用が考えられるのでしょうか。
この点について、「移転価格税制に関する参考事例集」の【事例24】に事例が示されています。
【事例24】によると、「製品Aを製造するためにX国に国外関連者S社を設立し、製造販売活動を行ってきたが、X国における製品Aの業績が非常に好調であるため、S社に製品A事業の責任全般を負わせる方が効果的・効率的な運営ができると考え、製品Aに関する特許権と製造ノウハウをS社に譲渡した」
というシチュエーションになっています。日本本社から独立して、自分たちでやっていかせようという経営判断ですね。
このようにDCF法は、無形資産の(貸与ではなく)売買取引の際に適用が検討される方法と言い切っていいと思います。
普通の棚卸資産取引や役務提供取引に適用されることは考えにくいです。
DCF法の採用理由
そしてこの特許権、製造ノウハウの譲渡取引について、
・比較対象取引が存在せず
・利益分割法も適用できない
ため、DCF法を最適な独立企業間価格算定方法として採用しています。
DCF法は、合理的な予測期間における予測収益を合理的な割引率で割り引いて現在価値を算定する方法です。
一応認められたとはいえ、計算に多くの仮定や予測を用いるため、他の方法が適用できる場合はDCF法以外の方法を優先することとされています。
ですので比較対象取引が見つかる場合や利益分割法が適用できる場合は、そちらを採用することになります。
計算方法
事例では特許権が失効するまでは競争力を維持できるという理由で特許権の残存有効期間の事業計画を作成し、各期の利益を加重平均資本コストという投資家の期待収益率で割り引いて算定しています。
M&Aなどにおける企業価値の算定方法と同じロジックですが、事業計画における利益全体ではなく、無形資産部分の割引現在価値を算出する点に注意が必要です。無形資産の譲渡対価を算定しようとしているからです。
事業計画全体の利益=「基本的活動による利益」+「無形資産の使用による超過利益」です。
無形資産をもたずに基本的活動のみを行っている比較対象企業の利益率を使うことによって基本的活動による利益を算出し、それを超える部分が無形資産の価値になります。考え方は残余利益分割法における残余利益と同じですね。
使うことがある・・かも?
この事例のように親子間で特許権と製造ノウハウを譲渡することがないとも言い切れないでしょうし、業種によっては商標権や販売ライセンスの売買を行うこともあります。
【事例24】には今回お伝えしたこと以外にもいろいろ書いていますので、気になる方は参考事例集を確認してみることをお勧めします。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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