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決算短信等の年次報告資料と移転価格ポリシーに矛盾がないか要確認 | 押方移転価格会計事務所
- 2017.01.23
- 移転価格全般
上場企業は決算短信や有価証券報告書の開示が義務付けられています。未上場企業もホームページ等に様々な自社グループの情報を掲載していると思います。これらの開示情報は税務調査時には全てチェックされていると考えておきましょう。移転価格税制の観点からも、移転価格ポリシーと矛盾する内容が開示されていないか確認が必要です。
投資家向け情報と移転価格文書は目的が違う
移転価格文書(ローカルファイル)は、海外子会社との取引を移転価格税制に準拠した適切な価格(=独立企業間価格)で行っていることを説明するための資料です。「独立企業間価格で取引していますので問題ありません。」ということを主張することがそもそもの目的です。
有価証券報告書や決算短信のように、株主(投資家)への情報提供が目的ではありませんし、銀行から融資を受けるための資料でもありません。違った目的を持つ資料が両方とも調査官の目に触れるので、矛盾がないように注意が必要ということです。
移転価格ポリシーの根本的ロジック
日本が親会社で海外に子会社がある企業グループの移転価格ポリシーにおいては、多くの場合「海外子会社を比較対象とする取引単位営業利益法(TNMM)」が採用されます。
これは親会社と子会社の機能とリスクを分析した結果、子会社は基本的な製造活動や販売活動のみを行う法人であり、超過収益を生むような重要な機能やそれに伴うリスクは負担していない(=海外子会社は重要な無形資産を保有していない)と判断したことを意味します。
基本的活動のみを行う企業であれば、同じような企業を企業データベースから見い出すことができ、それらの企業の営業利益率と海外子会社の営業利益率が同水準であれば、親子間の取引は独立企業間価格で行われたと間接的に説明できるというロジックで移転価格ポリシーが構築されることになります。
海外子会社が重要な無形資産を有していると受け取れる開示がされていないか
このようなロジックで移転価格ポリシーを構築しているにもかかわらず、ホームページ等で海外子会社が重要な無形資産を有していると受け取れる開示がなされていると矛盾が生じます。例えば海外子会社で相当規模の研究開発を行っているとか、営業・マーケティングに関してグループ全体に貢献する機能を有しているといった内容の記述です。
海外子会社が重要な機能と相応のリスクを負っている(=重要な無形資産を有している)のであれば、取引単位営業利益法は適切とはいえない可能性があります。日本の当局が「子会社にも応分のリスクを負担させるべき」と主張するかもしれませんし、海外の当局が「子会社には重要な無形資産があるので、もっと高い利益があってしかるべき」と主張するかもしれません。
つまり移転価格ポリシーのロジックが根本から崩れる可能性があるということです。情報開示の際には移転価格税制についても一定の考慮をすることが大事だと思います。
最後に「ミニワーク」をご提案します。ぜひ社内の皆さんと一緒に考えてみて下さい。
❝ミニワーク❞
「海外子会社が重要な無形資産を有していると受け取れる情報は開示されていますか?開示されているならば、移転価格ポリシーとの整合性をどのように取るべきでしょうか?」
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