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配当で利益を回収しても移転価格問題は解決しない | 押方移転価格会計事務所
- 2023.04.12
- 移転価格全般
配当は移転価格税制とは無関係
移転価格税制は、海外子会社との取引(国外関連取引)を独立企業間価格で行うことを求めるルールです。
一言で海外子会社との取引といいましたが、詳しくは次の5つに分類されます。
- 棚卸資産取引(商品・製品の売買)
- 役務提供取引(技術指導などのサービス提供)
- 金銭消費貸借取引(親子ローンの金利)
- 無形資産取引(ロイヤリティ、特許権の売却など)
- その他(中古固定資産の売却など)
上記の取引について、独立企業間価格以下で子会社に販売したり、独立企業間価格よりも高く子会社から購入したことによって、日本本社の所得が少なくなった場合は、独立企業間価格で取引したと仮定した場合の所得を算定しなおすことになります。
一方、配当金は出資に対するリターンであり、上記のいずれにも含まれません。
法人税を払った後の剰余金の分配ですので、製品・商品の売買やサービスの提供といった事業上の取引とは全く性質が異なります。
当然ですが、「配当の独立企業間価格」なるものも存在しません。
そのため、「棚卸資産取引では海外子会社に所得移転が生じているが、配当で回収する方針なのでトータルでは問題ない」という理論は通じません。あくまでも事業上の取引価格を独立企業間価格で行う必要があります。
「子会社に利益が出たら配当で回収するつもり」と考えて子会社支援を行うと、移転価格税制上の問題となる可能性がありますので注意が必要です。
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移転価格税制とは?仕組みについて図解でわかりやすく解説
外国子会社配当益金不算入制度
配当に関する項目として、「外国子会社配当益金不算入制度」があります。
これは発行済み株式の25%以上を6ヶ月以上継続して保有する外国法人(外国子会社)からの配当は、配当額の95%が益金不算入となるというルールです。
この制度の趣旨は二重課税の排除です。
配当金はその国で法人税を納めた後に残った利益が支払原資です。そのため、配当金を受け取った側で益金に算入すると両方の国で法人税がかかるので、それを防止するためにこの制度が設けられました。
その結果、海外子会社から配当を受け取った場合は、5%部分しか法人税がかからないことになります。
「子会社への所得移転分は配当で回収する予定」という企業サイドの主張に対し、「配当してもらっても5%だけですからねぇ・・」と調査官が切り返し、「そういうルールを作ったのはそちらでしょう」とやり取りしているのをきいたことがありますが、議論が根本的にズレています。
「配当は国外関連取引ではないので、移転価格税制とは関係ない」で話は終わりです。
海外子会社からの配当をどうするかは、グループ経営のスタンスや本社や子会社の業績によってそれぞれだと思いますが、配当によって移転価格上の問題は解決できないことは知っておきましょう。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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