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移転価格文書で税務ガバナンスへの意識の高さを示す | 押方移転価格会計事務所

移転価格税制 売上 規模

移転価格税制は他の税制とは毛色が違う

移転価格税制は、法人税法の特別法である租税特別措置法66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)を根拠条文としますので、一応法人税の範疇に入ります。

ですが他の税制のように条文にあてはめていくというよりは、親子間取引の妥当性を説明するという経済分析的な要素が強い面があります。

「妥当って何?」と誰もが思うと思いますが、「親会社と子会社が果たしている機能とリスクに見合った利益水準になっているかどうか」「独立した第三者間取引でも同じような結果になるかどうか」という観点から説明することになります。

そのため例えば、「受取配当金の益金不算入額」のように絶対的な金額が算出されるものではなく、「まあ妥当だね」という落としどころを探るような形になります。このあたりは他の税制とは違って、スッキリしない部分と言えるかもしれません。

国と国の税金の取り合い

移転価格税制は親子間の利益配分を妥当な水準で行うことを求めるものですが、それぞれの国の税務当局は、当然、「自国にとって妥当な水準」を主張してきますので、国境線ではないですが主張の食い違いが起きてきます。

例えば海外子会社が赤字の場合は、現地の税務当局は、親会社から不当に高く買わされているのではないのかという疑いをもつことになりますし、海外子会社の利益率が高い場合は、日本の税務当局が、海外子会社に不当に安く販売しているのではないかという疑いをもつことになります。

このような議論をする上での前提条件として下記を挙げることができます。

租税回避の意図は関係ない

意図的に所得を海外に移転させようとしたかどうかは関係ありません。意図していなくても、独立企業間価格以下で販売していたのであれば移転価格課税を免れることはできません。

機能とリスクが限定的な会社は利益水準も一定範囲に収まるべき

通常、海外子会社が果たしている機能とリスクは親会社よりも単純であると考えられます。 機能とリスクが限定的な会社が赤字だったり、反対に大儲けしているのは不自然という考え方をします。

海外子会社が大きな利益を上げている場合は、「研究開発機能があるから」「独自のマーケティング戦略が功を奏したから」などという説明をする必要があります。

逆に赤字の場合は海外の税務当局に対し、「特殊要因で赤字になったが、実質的には黒字」などという説明を考えておく必要があります。実際のところは一生懸命やったが赤字だったということが多いと思いますが、移転価格税制上は海外子会社が赤字続きになっていることにはリスクがあります。

事前の備えが重要

このように移転価格税制には何ともしがたい面があり、「これで絶対大丈夫」ということにはならないのですが、上記のような議論が起きうるということを事前に知っておくことが大事です。

仮に移転価格上の問題が生じていてすぐに解決できない状態だったとしても、移転価格文書をきちんと整備し「鋭意改善努力をしています」という企業と、何の備えもない企業では追徴リスクは大きく違ってきます。

課税当局は移転価格文書のない企業に対して、類似企業の平均利益率等を用いた推定課税を行う権利をもっていますが、これは税務コンプライアンス意識の低い企業に対する罰則的な意味もあると考えられます。

推定規定がないと、親子間取引について何の説明もできない企業が見逃されることになります。「特に何のルールもありません」「わかりません」で通るのであれば、きちんと準備をした企業が何のために労力を割いたのかわからなくなります。

最も大事なことは税務コンプラインスに対する意識的な取り組みであり、その取り組みを目に見える形にしたものが移転価格文書です。心の中でいくら思っていても目に見える形(=書面)になっていなければ外部者にはわかりません。

税務調査はエビデンス主義です。エビデンスをきっちり整備していればリスクはかなり低減できます。移転価格に関する最も強力なエビデンスとして移転価格文書を用意しておくことが有効です。

関連記事:「これだけは知っておこう!」移転価格の基礎講座(前編)

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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