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海外子会社側の移転価格対応は親会社がリーダシップを発揮すべき | 押方移転価格会計事務所

海外子会社 移転価格対応

移転価格税制は国際ルールですので、海外子会社側での対応も必要です。移転価格税制以外の税金や会計処理等については、海外子会社が現地の会計事務所と連絡を取りながら進めていけばよいですが、移転価格税制への対応を子会社任せにすることは難しいと思います。

理由として、下記3つを挙げさせていただきます。

①移転価格対応は、帳簿処理や文書作成の問題ではなく親子間の利益配分の問題であること
②海外子会社側の体制確保(外部アドバイザーを含めて)が難しいこと
③親会社でなければ入手できない情報の記載を求められる場合があること

①について

移転価格税制に対応するということは、親子間取引を独立企業間価格で行うことにより、二重課税のリスクを最小化するということです。親子間取引の価格や利益水準を適切にコントロールする必要がありますので、海外子会社任せにすることはできません。

ローカルファイルを形式的に作成すればいいという考えではなく、親子間取引が独立企業間価格かどうかを確認し、問題が生じている場合は改善活動を行うPDCAサイクルを作ることが重要です。

例えば取引単位営業利益法(TNMM)を採用している場合において、営業利益率レンジから外れそうな場合に、「異常な在庫評価損が計上されているため、これを除外する」といった方法でレンジ内に納めることも短期的には可能ですが、長期的には移転価格ポリシーに準拠して親子間の取引価格自体を修正していく必要があります。

これはどう考えても親会社の仕事の範疇です。

②について

海外子会社は親会社よりも人材リソースが不足していることが通常です。よほどの大企業であれば別ですが、移転価格税制に対応できる人材を各子会社に配置することは不可能に近いと思います。

また子会社の会計事務所が、移転価格税制に適切に対応できる可能性も低いでしょう。やはり親会社がグループ全体の移転価格対応を主導する必要があります。

③について

海外子会社側の移転価格関連文書において、親会社でしか入手できない情報の記載が必要になる場合があります。

具体的にいうと、中国では「バリューチェーン分析」という項目において、中国子会社と日本本社との取引だけでなく、グループ全体のサプライチェーンの記載が要求されることになりました。

またベトナムやインドネシアにおいては、売上数億円規模の会社に対してローカルファイルだけでなくマスターファイルの作成も義務化されました。

マスターファイルはグループ全体の事業概況を記載する書類ですので、子会社だけで作成することはできません。日本のマスターファイル作成基準は「連結総収入1000億円以上」ですので、日本側ではマスターファイルは不要であっても子会社側で必要という事態が起きています。

これらの国がグループ全体の情報をつかもうとしている狙いは、当然ながら税収の確保です。現地法人の貢献が過少に評価されているという根拠を見つけようとしているのです。海外子会社が当局に報告する内容を日本本社が把握していないという状況は回避しておかなければならないでしょう。

最後に「ミニワーク」をご提案します。ぜひ社内の皆さんと一緒に考えてみて下さい。

❝ミニワーク❞
「海外子会社側の移転価格対応を適切に行うために御社が補わなければならないリソース(情報、人材、予算など)は何でしょうか?」

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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