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生産移管による超過利益は親会社に帰属するのか | 押方移転会計事務所
- 2021.06.24
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海外子会社で製造活動を行っている理由は何かと聞かれると、多くの企業は「人件費が安いから」と答えると思います。
日系企業が多く進出している東南アジア諸国と日本の人件費の格差はまだまだ大きいので説得力のある理由です。
単純に考えれば海外子会社に生産移管すればコストが下がって連結ベースの利益が増えることになりますが、その利益はどちらが享受すべきでしょうか。
親会社の意思決定による生産移管だから超過利益はすべて親会社に帰属すべきという主張もありますが果たしてそうでしょうか。
比較対象企業の人件費も安い
人件費が日本より安いという点については、海外子会社と同じ国にある比較対象企業を選ぶことによって自然に加味されます。
比較対象企業の利益水準は一様にその国の人件費水準を反映したものだからです。
つまり海外子会社が基本的な製造販売活動のみを行っているのであれば、同じく基本的な製造販売活動のみを行っている比較対象企業の利益率と比較することによって、人件費水準を加味した分析ができていることになります。
先進国と途上国の人件費の格差は途上国に帰属すべきというロケーションセービングの考え方もありますが、OECDは採用していません。
機能リスクの変化を分析すること
しかし人件費は検討項目のひとつに過ぎません。
実際のビジネスは人件費が下がったから利益が増えたと単純に言い切れるものではありません。
大事なことは、生産移管前後の両社の機能とリスク、無形資産の変化を分析することです。
生産移管によって海外子会社の機能面に大きな変化があったかもしれないですし、製造設備への投資、人員増加など負担しているリスクも増大している可能性があります。
無形資産の取り扱いに変化はないか
さらに無形資産についても検討が必要です。
生産移管にあたって親会社が製造ノウハウを提供した可能性は高いと思いますが、子会社も自社で製造活動を行うにあたって独自のノウハウを提供したかもしれません。
生産移管前後で無形資産の所在に変化があるのであれば、ロイヤリティ料率やロイヤリティ対象製品の変更、場合によっては独立企業間価格算定方法の変更が必要かもしれません。
一概にはいえない
他にも現地生産化によって関税が安くなった、現地調達化を進める取引先のニーズに応えることができて販売数量が増えた、コストが下がったことを見越して値下げを要求された、などいろいろな事情があると思います。
これら生産移管による影響を分析した上で、親子それぞれの機能とリスク及び無形資産に見合った利益水準や利益配分になるような値決めをしたという理論武装が必要であり、一般的、画一的な答えはありません。
移転価格対応においては機能とリスクの分析、無形資産の分析が常に重要です。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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