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移転価格税制とは?仕組みについて図解でわかりやすく解説 | 押方移転価格会計事務所
- 2022.06.05
- 移転価格全般
移転価格税制とは何かということについて、図を使って簡単に説明したいと思います。
移転価格税制は、海外子会社に対する「身内びいき」を防止するルール
移転価格税制とは、海外子会社との取引を資本関係のない第三者と同様の条件で行いなさいという税制です。
税務当局は「子会社だから身内びいきをしているかもしれない」という疑いを持っており、税務調査の時に海外子会社との取引を第三者間取引と同様のルールで行なっていることを説明した移転価格文書(ローカルファイル)の提出を求める場合があります。
- あるべき価格は3億円では
なく3億3000万円と算定 - 差額の3000万円を
所得加算 - さらに7年間
さかのぼることができる
ローカルファイルを提出できない場合、税務当局は独自にあるべき価格(独立企業間価格)を算定し、法人税の金額を再計算することができます。(これを推定課税といいます。)
《 推定課税のイメージ 》
海外子会社への実際の販売価格が年間3億円だとします。その3億円の妥当性をローカルファイルによって説明できなかったため、税務当局があるべき価格を独自に推定し、その結果が3億3000万円だったとします。この場合、差額の3000万円を利益の計上もれとして修正申告をすることになります。
さらに移転価格税制では最長7年間さかのぼって修正することができますので、単純計算ですが、3000万円×7年=2億1000万円も利益を増やして法人税を再計算することになります。
2億1000万円利益が増えると、加算税や延滞税も含めて追徴税額は約1億円にもなります。この推定課税を避けるために移転価格文書(ローカルファイル)が必要となるのです。
ローカルファイルの作成を外注しても移転価格問題は解決しない
ローカルファイルの必要性を認識した企業は、コンサルタントにローカルファイルの作成を依頼することが多いのですが、ローカルファイルを単に作成するだけでは移転価格税制に関する問題の根本解決とはなりません。
ローカルファイルの代行作成には下記3つのデメリットが存在するためです。
デメリット① ノウハウの蓄積が不十分になる
ローカルファイルの作成を外注すると文書作成過程にブラックボックスが生じます。
完成したローカルファイル(移転価格分析報告書)についての説明を受けただけでは理論的背景や実務の細かい部分についての理解が不十分となる可能性が高いです。
税務当局にローカルファイルの内容を説明するのは企業自身なのですから、採用されなかった独立企業間価格算定方法などを含め、しっかりとローカルファイルの中身を理解しておくことが重要です。
デメリット② 年度更新のたびに多額のコストがかかる
ローカルファイルは毎期更新が必要な書類です。ローカルファイルの中身についての理解が不十分な場合、年度更新のたびに外部コンサルタントに依頼せざるを得なくなり、結果的にコスト増となります。
「〇年前に一度ローカルファイル(移転価格文書)を作ったのですが、予算の都合で、その後は放置されていまして・・」というご相談を受けることもあります。
ローカルファイルは1年分だけ作ってもあまり意味がありません。年度更新のことも考えた上で文書化を行いましょう。
デメリット③ 日常対応ができない
ローカルファイルの作成は移転価格対応の一部に過ぎません。
下記のような細々とした日常業務については、外部のコンサルタントがその都度対応することが難しいため、社内に移転価格税制に関するノウハウを蓄積しておくことが重要です。
- 新しく始まる海外子会社との取引価格の設定
- 商流変更が起きた場合の移転価格リスクの有無の検証
- 利益率レンジからの逸脱が起きそうな場合の対応
- 来期の予算・経営計画に移転価格上のリスクがないか検証
- 親子ローン実行時の通貨及び金利の決定(海外寄付金対策)
- 海外出張旅費が本社負担か子会社負担かを判断(海外寄付金対策)
不正確な情報に基づくローカルファイルは認められない
ローカルファイルの作成を外部コンサルタントに依頼するだけでは、移転価格税制に対する問題の根本解決にはならないことがおわかりいただけたと思います。
さらに注意が必要な点として、ローカルファイルが不正確な情報に基づいて作成されたものである場合はローカルファイルを提出したことにならないことが挙げられます。
「特定製品の一時的な特需があったから子会社の利益が高くなっただけであって、その影響を除外すれば移転価格税制上の問題はない」など、ローカルファイルという書面上の言い回しを工夫することは容易です。
しかし事実は何年間にもわたってその製品が売れ続けているのであれば、それは適切な説明とはいえません。
ローカルファイルが不正確な情報に基づいて作成されていると税務当局が判断した場合は、ローカルファイルを提出したとは認められず、結局、推定課税を受けることになってしまいます。
親子間の取引価格の設定方法に問題があるのであれば、まずはそこを修正することが重要ということです。
移転価格税制に対応できる社内体制を整備しよう
親子間の取引価格の設定方法を修正するとなると、これは外部コンサルタントの権限の範囲の外です。経理部門だけで対応できる問題でもありません。
親子間取引に関わる関係各部門が移転価格税制の考え方を理解した上で、移転価格税制上の問題がない価格で実際に取引することが必要になります。
言い換えると、移転価格税制に対応できる社内体制を整備する必要があるということになります。
グローバル企業の一員として移転価格税制に対応できる会社になりたいとお考えの方は、当事務所のコンサルティング説明資料をご確認下さい。
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<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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