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一定の航空機リース業は事業基準を満たすこととされた理由 | 押方移転価格会計事務所
- 2018.07.11
- 国際税務
外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の改正トピックの続きです。
この記事をご覧になる前に 「別表17(3)が不要になる代わりに推定規定が創設」、「特定外国関係会社に該当すれば租税負担割合が20%以上でも合算対象」、「タックスヘイブン税制改正後もトリガー税率は適用免除基準として事実上存続」、「経済活動基準を満たす場合でも受動的所得は合算する理由」もぜひご一読下さい。
外国関係会社(海外子会社)の租税負担割合(≒法人税率)が20%未満の場合、経済活動基準を1つでも満たさなければ、その子会社の所得を親会社に合算する必要があります。
経済活動基準とは、事業基準、実体基準、管理支配基準、非関連者基準or所在地国基準のことですが、今回は事業基準の改正について説明します。
事業基準とは、外国関係会社の事業が次に該当しないことを確認するものです。
- 株式または債券の保有
- 工業所有権、生産ノウハウ等及び著作権の保有
- 船舶または航空機の貸し付け
上記事業はわざわざ軽課税国で行う理由がないとして、原則として合算課税の対象とされます。
航空機リース業の特例が追加
航空機リース業とは、ボーイング社などから機体を買って航空会社にリースするビジネスモデルのことですが、平成29年度の改正により、一定の条件を満たす場合は事業基準をクリアすることとされました。
その条件とは次の通りです。
- 外国関係会社の役員または使用人が、本店所在地国において航空機リース業を行うために通常必要な業務のすべてに従事していること
- (航空機リース業に係る業務委託料の支払額)÷(航空機リース業に従事する役員及び使用人の人件費総額)≦30%
- (航空機リース業に従事する役員及び使用人の人件費総額)÷(航空機の貸付収入-貸し付けた航空機の減価償却費)>5%
これは外国の高度な人材を活用して(=一定の人件費をかけて)実体のある航空機リース業を行っている場合に合算されるのは不合理だという従前からの批判に対応するための改正です。
例えばアイルランドは航空機リース業に力を入れており、航空機リース業に精通した専門家が多くいます。
外国企業がアイルランドに現地法人を設立し、人を配置して専門家のアドバイスを受けながら航空機リース業を行うのであれば、それはまっとうなビジネスであり、租税回避目的ではないという主張が認められた形です。
所在地国基準から非関連者基準へ変更
経済活動基準のうち、所在地国基準と非関連者基準は業種により、どちらか片方が適用されます。
所在地国基準とは、外国関係会社が事業活動を本店所在地国で行っているかどうかを判定するもので、主に製造業に適用されます。
非関連者基準とは、外国関係会社が主として関連者以外の者と取引を行っているかを判定するもので、卸売業や銀行業に適用されます。
航空機リース業は、これまでは所在地国基準が適用されていましたが、上述の改正に連動する形で非関連者基準が適用されることに変更されました。
航空機は本店所在地国以外で使用されることが通常であり、所在地国基準は適当ではないという判断だと思われます。
結果として、航空機リース業の場合は、航空機リースによる収入のうち非関連者からの収入が50%超であれば非関連者基準を充足することとなりました。
一定の航空機リース業は合算不要となる
上記改正により、一定の航空機リース業は経済活動基準を充足し、合算課税不要となる可能性が高くなりました。
外国子会社合算税制は、つぎはぎだらけでわかりにくいルールですが、その分「低税率国にペーパーカンパニーを作ることによる課税逃れを防止する」という本来の趣旨は達成し得るルールになってきているように思います。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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