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<タックスヘイブン税制改正>資産性所得は軒並み合算対象 | 押方移転価格会計事務所

タックスヘイブン 税制 資産性所得

タックスヘイブン対策税制とは、低税率国に実体のない会社を作ってそこに利益を落とすことによる課税逃れを防止するルールです。正式名称は「外国子会社合算税制」といい、この税制の適用対象となった場合、その海外子会社の所得を日本本社の所得に合算することになります。

新聞でも報道され始めていますが、2017年度の税制改正でタックスヘイブン対策税制の改正が行われます。現在財務省で作業が進められており、正式には年末の税制改正大綱で発表されることになりますが、現時点でわかっている範囲で改正内容について書いてみようと思います。

(2018年12月11日追記)改正後の外国子会社合算税制については下記記事をご確認下さい。

「一定の航空機リース業は事業基準を満たすこととされた理由」
「別表17(3)が不要になる代わりに推定規定が創設」
「特定外国関係会社に該当すれば租税負担割合が20%以上でも合算対象」
「タックスヘイブン税制改正後もトリガー税率は適用免除基準として事実上存続」
「経済活動基準を満たす場合でも受動的所得は合算する理由」

現行ルールは税率に着目

現行のルールは「海外子会社の税率」に着目する方式です。

海外子会社のトリガー税率(≒法人税率)が20%未満の場合、原則としてその海外子会社の所得は日本本社の所得に合算することになります。

トリガー税率が20%未満の国は、アジア諸国では香港とシンガポールです。ですので、この2ヶ国に子会社がある場合は原則として合算対象になります。

この判定は正確には個々の会社ごとに行いますので、税制優遇を受けている場合は、タイなどに存在する子会社も合算対象となる可能性があります。

適用除外要件を満たす場合は合算対象とならない

トリガー税率が20%未満の場合は原則としては合算対象なのですが、その子会社がペーパーカンパニーではなく、きちっとした事業実体がある場合は合算対象から外すことができます。

そのための要件を「適用除外要件」といいます。今回は詳細については書きませんが、いくつかの適用除外要件をクリアしている場合は、その旨を確定申告書の別表17-3に記載することにより、その海外子会社の所得の合算は不要になります。

ちなみに、この適用除外要件を満たしているかどうかが税務調査で議論になる場合があります。適用除外要件を満たしていないという判断が出た場合は、過去数年間分の子会社の所得を日本本社に合算して追徴税を支払うことになります。

改正案は「所得の種類」に着目

税率に着目している現行ルールに対し、改正案では海外子会社の所得の種類に着目します。

海外子会社が汗を流して稼いだ所得(事業所得)については合算対象とはしないが、株式の配当やロイヤルティー収入といった資産性所得に関しては、たとえ税率が20%以上の国であっても、日本本社の所得に合算することになります。

日本より税率の低い国にある海外子会社が適用対象となるので、中国、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムなどにある海外子会社の資産性所得を把握することが必要になります。

特許権や株式などは事業に比べて売却することが容易ですので、これらを低税率国に移転することによる課税逃れを防止するという意図ですが、正直、「そこまでやる?」という気もします。

大企業の場合は海外子会社も大きいので大変な作業になりますが、中堅企業の場合、海外子会社は比較的簡素な場合が多いので、日本本社への報告項目にいくつか追加することにより対応可能でないかと思いますが、詳細については年末の税制改正大綱を待ちましょう。

関連記事:タックスヘイブン税制の適用除外要件は管理支配基準がポイント

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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