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移転価格文書(ローカルファイル)と確定申告書の違い | 押方移転価格会計事務所
確定申告書は形式主義、移転価格文書は実質主義
移転価格文書(ローカルファイル)と確定申告書の違いは何でしょうか。
海外に進出している企業であれば、どちらも作成する必要があるものですが、確定申告書は決められたフォーマットにきっちり記入する書類であるのに対し、移転価格文書(ローカルファイル)には公式フォーマットのようなものはありません。
確定申告書は納税額を算出する文書であり、決められた項目を記入すれば誰が作成しても基本的には同じ結果(=納税額)が算出されるようになっています。
一方、移転価格文書(ローカルファイル)は親子間取引における取引価格の妥当性を説明する文書であり、絶対的に正しい金額を算出することを目的とはしていません。
親会社と子会社が果たしている機能とリスクを考慮して、「この幅(独立企業間価格幅)の間に入っていれば、妥当といえるよね」と説明するための文書です。
ローカルファイル例示集もあくまで「例示」
国税庁から移転価格文書(ローカルファイル)の例示集も公表されていますが、これもその名の通り「例示」です。
留意事項の箇所にも「一般的な例を挙げたものであり、実際に必要とされる内容は、取引の内容、規模、重要性等により異なります。」と記載されています。あくまでも参考資料という位置づけです。
つまりローカルファイルは、「この項目を書けばOK」という形式主義の書類ではなく、親子間取引が独立企業間価格で行われていることを実質的に説明する内容でなければならないということです。
果たしている機能・リスクから見て利益率が妥当かどうかという視点で書く
経理部門から外部に提出する資料には、確定申告書の他にも法定調書や源泉徴収票、事業報告書(決算書)などがありますが、ほとんどの文書は記載すべき項目が決まっていて、その項目を順次埋めていくような形になっています。
移転価格文書(ローカルファイル)も記載する項目は大体決まっているのですが、1つや2つ抜けている項目があるからダメというものでもなく、反対に自社オリジナルの項目を追加しても構いません。
大事なことは企業の外部者である税務当局に対し、独立企業間価格で取引を行っていることをわかりやすく説明する文書にすることです。
オーソドックスな説明方法は、親会社と子会社の機能とリスクに注目し、その機能とリスクに見合った利益率になっているかどうかを類似する第三者間取引(内部比較対象があればその取引、無ければ外部公表データ)と比較することにより証明するという流れになります。
決算が終わってから専門家に依頼する実務慣行は誤り
ローカルファイルの作成を外部専門家に依頼している企業もありますが、確定申告書のように決算が終わった後になってから依頼するという実務慣行は完全な誤りです。
確定申告は一種の集計作業ですので、決算が終わってから税理士に依頼しても問題ありません。
ですがローカルファイルは期中における親子間取引が独立企業間価格だったかどうかを検証した文書ですので、決算が終わってから依頼しても後の祭りになる可能性があります。
親子間取引に問題がないかどうかを日ごろからチェックするという社内体制を整えた上で、ローカルファイルは決算が終わった後に確認的意味合いで作成するという状態(=移転価格対応の内製化)が目指すべきゴールです。
記載項目を埋める(=形式主義)のではなく、妥当性を説明する(=実質主義)文書は、経理の方にとっては慣れないかもしれませんが、ポイントを押さえれば決して難しいものではありません。親子間取引に異常な偏りがないことを説明するという感覚でいいのです。
決算の内製化、連結決算の内製化、確定申告の内製化ができて、移転価格対応の内製化ができないはずはありません。要は慣れの問題です。
関連記事:「これだけは知っておこう!」移転価格の基礎講座(前編)
ローカルファイル(移転価格文書)の作成期限と提出期限
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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