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ローカルファイルの作成は移転価格対応の一部に過ぎない | 押方移転価格会計事務所

移転価格 無償支給 有償支給 ローカルファイル

コンサルタントに「移転価格ドキュメンテーション」を依頼し、(内容はよくわからないが)見た目は立派なローカルファイルを作ってもらうことが移転価格対応だと思っている人がいるかもしれません。

ですがローカルファイルの作成は移転価格対応の一部に過ぎず、日常業務において移転価格税制への対応が求められる場面は他にもたくさんあります。

ローカルファイルは主として棚卸資産取引の移転価格リスクをヘッジするための文書ですが、移転価格税制(及び寄付金規定)の適用範囲には、グループ内サービス提供やグループ間金融取引も含まれます。

つまり、

  • 海外子会社に対する技術援助契約の金額の算定根拠はどのように考えればいいのか、また契約書の文言はどうするか
  • 親子ローンを行う際の金利はどのように設定しようか
  • 海外展示会の費用を親と子でどのように負担しようか
  • 海外赴任規定はこのままでいいのか

といった日常業務の中にも移転価格リスクや寄付金リスクが潜んでおり、それに対応することも移転価格対応です。

年に1回ローカルファイルの更新を外注するだけでは不十分

また棚卸資産取引であっても、

  • スタートアップ時は海外子会社への販売価格を低くしたいが、移転価格リスクは大丈夫か
  • 原材料高騰による価格改定を行いたいが、移転価格リスクはないか
  • 今年から商流が変更になるが、移転価格リスクはないか
  • 無償支給にすべきか、有償支給にすべきか
  • コミッションの料率はどのように設定するか

といった課題もあると思います。

さらに言えば、予算編成の時に海外子会社の利益率が高すぎないか(低すぎないか)をチェックすることも移転価格対応のひとつですし、新たに出資した会社が国外関連者に該当するかどうかを判定するのも移転価格対応です。

ローカルファイルの作成は移転価格対応の一部に過ぎないということがおわかりになると思います。

「移転価格対応の内製化」が決め手

決算が終わった後に形式的にローカルファイルを作成するのではなく、移転価格税制への対応ノウハウを社内に蓄積し、移転価格リスクや寄付金リスクを日常的にチェックすることが重要です。

ローカルファイルも初回は専門家の支援が必要かもしれませんが、年度更新はそれほど難しいものではありません。ビジネスが毎年毎年、劇的に変わるものではないからです。

「移転価格対応=ローカルファイル(というよくわからない書類)を外部コンサルタントに作ってもらうもの」というイメージは誤りです。もっと身近なものであり、ある程度勉強すれば十分に自社で対応可能なものです。

地方企業や資本金1億円未満の税務署所管企業に対しても移転価格関連の指摘が厳しくなる傾向にありますし、海外子会社サイドでローカルファイルやマスターファイルの作成が義務化される動きもあります。

移転価格税制への対応は避けては通れない状況になっていますので、ぜひ積極的に移転価格対応のノウハウを身に着けていただきたいと思います。

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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