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監査法人からローカルファイルの提出を求められることがある | 押方移転価格会計事務所
日本本社の監査法人、あるいはヨーロッパやアジアにある海外子会社の監査法人からローカルファイルの提出を求められたという話を聞くことがあります。
監査法人は決算書の監査が仕事であり、税務当局のような追徴税を課す権限はもっていませんが、どのような理由があるのでしょうか。
文書化義務を順守しているかどうか
まず移転価格文書化ルールへの対応状況を確認している可能性があります。
親子間取引額などが現地の文書化基準に達している場合、決められた期日までにローカルファイル等を作成しなければなりません。
法律で決められた文書を整備しているかどうかという税務に関するコンプライアンス(法令順守)の状況、言い換えれば税務に関する内部統制の整備状況を確認しているのかもしれません。
不確実な税務ポジション
それ以上に重要な監査項目として、不確実な税務ポジション(Uncertain Tax Positions : UTP)というものがあります。
これは十分な知識を持つ税務調査官が調査した場合に追徴課税を受ける可能性が高いと判断したのであれば、その追加的税務負債をオンバランスするというルールで、IFRS(国際会計基準)と米国会計基準(US-GAAP)において既に導入されているものです。
調査官の「見落とし」はない
UTPは調査官が完全な知識と調査に必要な情報を持ち、見落とす可能性がないという前提で追徴リスクを自ら開示させるという強烈なルールです。
税務訴訟など他の不確実な項目もUTPとしての検証対象ですが、やはり金額的重要性が高い移転価格がメインです。
移転価格調査を受けたと仮定した場合の追徴見込額を「最も可能性の高い額」または「期待値」として算出し、加算税等を含めてオンバランスし、監査法人のチェックを受ける必要があります。
移転価格課税による追徴リスクが低ければオンバランスの必要はありませんが、ローカルファイルがなければ監査法人もその判断ができない可能性があります。
現在の日本の会計基準にはないルール
UTPは現在の日本の会計基準には規定されていませんので、期末時点において移転価格調査が進行中で多額の追徴課税が濃厚であっても、更正通知が送られてくるまで(≒追徴税額が確定するまで)は、オンバランスも偶発債務としての注記もしないという奇妙な実務慣行になっています。
とはいえ日本の会計基準はIFRSに近づいていますので、日本においてもどこかのタイミングで導入されるかもしれません。
将来のことはわかりませんが、税務当局だけでなく監査法人からローカルファイルの提出を求められる可能性もあるということは知っておきましょう。
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<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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